最終日


とうとう迎えた最終日。


今日は引き継ぎと、終業式のみだったのですが、デスクが全く片付いていなかったので朝早めに行って、せっせとお片づけ。
とても狭いスペースなのに、5年分の資料や教案や生徒の作品などがじゃかじゃか出てきてびっくりしました。


そうするうちに後任の先生が来てくださったので、今学期作ったプリントなんかをまとめてお渡しして、あとはオフィスの中に何があるのか、デスクのどこに何を残していくのか、などをご説明しました。
もうこのデスクも私のデスクじゃなくなるんやなぁ、と思うと、少ししんみりしてしまいました。


そしてその後終業式へ。
夏休み中の注意や、来年度に関するアナウンスメントの後、学校を去る生徒と教師の紹介が始まりました。


私も教頭先生にご紹介いただいて、少しスピーチをさせてもらいました。
英語でのスピーチなので、緊張しちゃって、「思わず涙が・・・」みたいなことは一切なく、笑顔で「ありがとう」と「さようなら」を言うことができました。


終業式が終わると、今年教えていた生徒だけでなく、今まで教えたことのある生徒が、次々にさよならを言いに来てくれました。


「先生の授業楽しかった」
「日本語、いっぱい学んだよ」


なんて言われると、思わず涙が出そうになりましたが、なんとかこらえて笑顔でさようならを言いました。


でも、その後、オフィスで片付けの続きをしていると、今年の高校のクラスにいたAくんが来てくれました。
はっきり言って、そのクラス、何度も辞めたいと思うくらい大変なクラスでした。
人数は多くないんだけど、あんまり勉強したくない、どっちかというとクラスでもちょっと悪い方に浮いちゃってる生徒が集まっていたクラスだったんです。


学年の始めは、何度も何度もぶつかって、生徒も私もイライラが続くような授業でした。
「なんで授業進めさせれてくれないの!」とイライラする私に対して、
「なんでこんなんやるねん。やりたくないねん!」とイライラする生徒。


このままじゃダメだなぁ、と思い、少しずつ彼らの話を聞いたり、ほんの少しでもできるところがあればちゃんと褒めて、私なりに彼らとどうすればコミュニケーションがとれるのか試行錯誤の日々が続きました。


彼らの中の「認めてほしい」「話を聞いてほしい」という気持ちが、ちらっと見えるような時が、たま〜にありました。
すると、ほんの少しずつだけど、彼らとの距離が縮まっていくような気がしました。
そして、彼らのやる気が、ほんのりと見えるようなときが増えていきました。


そして迎えた最終日。


Aくんはオフィスの前の廊下で静かに涙をこぼしました。


「先生、ごめんな。でも楽しかった。俺、頑張れたよ」


そう言われた瞬間、こらえていた涙がどっとあふれてしまいました。


彼のできることを見つけられたこと。
頑張ろうと思うきっかけを一緒に作れたこと。
楽しいと思える場にいられたこと。


いろんなことが、ただただ嬉しかった。


日本語を通して、彼らと関わることができて本当によかったと思いました。
私にできたことは、本当に少しだったと思います。
それでも、ほんの少しでも彼らの人生に関わることができて幸せだと思えました。


本当に充実した5年間だった。
私、すごく楽しかった!


そんな5年間を過ごせて、本当に幸せだと思う。